相続での不動産の悩み

田舎で暮らしていた両親が二人とも亡くなって、空き家になった持ち家を相続しなければならなくなった。こういう場合はどうしたらいいのだろう。新月税理士法人代表社員の佐野明彦氏は次のように解説する。

「相続人のうち誰かが親と同居していて、なおかつ相続後もそこに住むのであれば、小規模宅地等の特例が利用できるので、相続時の評価額は8割減になります」

「では、相続人が誰も同居していなかったら? 実は、そういう場合でも、相続人が相続開始前の3年以上借家住まいなら、いずれ住居として使用するとみなされて、小規模宅地等の特例が認められるのです。ただし、実際に住む必要はないので、申告期限まで所有し、そのあと売却してもかまいません」

その家の相続に際し、相続税を支払っていた場合には、相続後3年以内に売却すると譲渡所得税が安くなることがあるため、さらに節税になるという。

生まれ育ち、家族の思い出がつまった家は、誰も住まなくても残したいという家庭も多いが、そうしたこだわりがないのであれば、親が存命中に便利なマンションなどに引っ越してもらって、家は先に処分しておくというのもひとつの手だ。

ちなみに、家以外に財産がないときは、相続税を物納することもできるという。ただし、「物納は評価額の算出などに時間がかかるので、事前に十分な準備をしておかないと間に合わない」(新月税理士法人代表社員の高馬裕子氏)。

でも、「マンション建設」の誘いには要注意

また、家の敷地が広かったり、自宅以外にも土地を持っていたりすると、地元の不動産業者から、ここにマンションを建てて経営すれば相続税が安くなりますよと勧められることもよくあるが、そういう話には安易に飛びつかないほうが身のためと、佐野氏は警鐘を鳴らす。

「たしかに賃貸物件を建てれば土地の評価額は下がるので、一時的には節税になります。しかし、建物が老朽化すれば修繕費もかかるし、空室のリスクも出てくるでしょう。たとえ不動産業者との間に家賃保証の契約があっても、家賃の額まで永久に保証してくれるわけではありません。入居者とのトラブルがあれば精神的な負担になります」

「要するに、マンション経営というのは事業ですから、真剣に取り組まなければそう簡単に利益など出ないのです。その覚悟がないなら、相続税をきちんと払ったほうがいい。そのほうが絶対に安く上がります」