「消滅時効」で未納分の全額回収は困難に! 法務、会計監査等ご相談下さい

横浜の「傾きマンション」にも比肩する驚きのニュースが飛び込んできました。管理組合の理事長だった男性が約16年間にわたって管理費など合計およそ11億7800万円を着服した事件です!
管理組合は被害額11億7800万円のうち公訴時効にかからない約4億円について、業務上横領容疑で警視庁に告訴状を提出しました。

報道によると、新潟県内の大型リゾートマンション(総戸数576戸)で、管理組合の理事長だった男性(68)が約16年間にわたって管理費など合計およそ11億7800万円を着服した疑いがあることが判明しました。その男性は副理事長に就任した1998年頃から管理費や修繕積立金を勝手に引き出し、自分の預金口座に送金して株式などの投資資金に使っていました。会計報告の際には架空経費を計上するなど、周到に発覚免れを策謀しており、「一時的に借りて投資で増やし、返すつもりだったが失敗して返せなくなった」と今になって釈明しています。

最高裁判決 管理費や修繕積立金の消滅時効は5年

この男性の職業は公認会計士だそうで、他の理事からも全幅の信頼を得ていたに違いありません。
その信用を逆手に取り、愚行に手を染めたわけですが、いまさら何を弁明したところで後の祭りです。
 

こうした蛮行は断じて許されませんが、今回、注目すべきは「公訴時効」の問題です。

公訴時効とは、犯罪後一定期間が経過することにより刑事訴追が許されなくなる制度のことです。今回の横領事件では、公訴時効により約4億円しか返金を訴えることができなくなりました!

管理組合が長い間、着服されていることに気付かなかった結果、公訴時効の効果により横領された全額を請求できなくなってしまったわけです。

実は、分譲マンションの管理費や修繕積立金には民法上の「消滅時効」も存在し、長期滞納を野放しにしておくと未払い分が回収不能になる危険があります。

滞納管理費などの返還請求を巡り、2004年4月に最高裁判所から1つの判決が言い渡されており、「管理費などの債権は定期給付債権(後述)に相当し、その請求期間は5年間とする」と判示されました。管理組合は滞納した管理費や修繕積立金を5年以内に回収しないと、消滅時効により5年を超過した期間に相当する滞納分は回収困難になる ―― というわけです。

・コマーシャルでよく見る「過払い金」の返還請求は10年間

・離婚による慰謝料を請求できる期間は3年間

・保険金の受取りを保険会社へ請求できる期間は3年間

・「住宅ローン減税」を還付請求できる期間は5年間

ひと口に時効といっても債権の内容によって消滅時効の期間には差異があり、各債権の性格や社会秩序に照らし合わせて請求期間(消滅時効する期間)に長短を設けています。

マンションの管理費や修繕積立金は、管理規約に基づき決められた額を毎月、定期に区分所有者が支払わなければなりません。

管理費や修繕積立金の支払いは「定期給付債権」に該当すると最高裁は判断しており、以後、定期給付債権の消滅時効期間である5年が管理費や修繕積立金の消滅時効期間として適用されることとなりました。

消滅時効を「中断」し、未回収リスクを低減する

5年以上管理費の滞納等を放置しておくと、管理組合は全額の回収が困難になるわけですが、消滅時効には「中断」といって、時効成立となる5年のカウントを振り出しに戻す(再度ゼロから消滅時効をスタートさせる)仕組みが存在します。

(1)裁判所に支払督促の申し立てや訴訟を提起するなど、裁判上の請求を行う。
(2)管理組合からの催告に基づき、滞納している区分所有者に一部だけでも弁済させる。

(3)「もう少し返済期間を延ばしてほしい」といった支払期限の猶予の申し出を取り付ける。

管理費などの長期滞納者に対し、上述のような請求や承認を求めることで消滅時効は中断します。

管理組合が滞納管理費などの債権者であることを自己主張する、あるいは、滞納している区分所有者に「滞納している」という事実を認めさせればいいのです。

管理費などの滞納には常習性があり、得てして同じ人が滞納を繰り返します。管理組合にとっては看過できる行為ではありません。毅然とした態度で滞納者と対峙する必要があります。冒頭で触れた横領・着服の被害に遭わないためにも、外部による会計監査の徹底が欠かせません。

私どもでは、司法書士での法務サポート、税理士でのマンション外部監査を承ります。ぜひ、ご相談下さい。